相続税には無縁だと思っていたが・・・
ある日、突然の病気であっという間に永眠した父親の遺品を整理していたSさん。父親の財産といえば、Sさんが生まれ育った実家の土地30坪と、預貯金が500万円ほど。実家は売っても2000万円くらいと近所の不動産屋さんから言われていたので、自分は相続税がかかるわけがないと思っていました。
Sさんの母親はすでに他界していたため、誰も住まない実家は売却し、自分が10年前に購入したマンションのローン残債2000万円を完済できればいいと思っていたのです。
しかし、実家の売却にあたり土地と建物の権利証を確認しようと、父親の銀行の貸金庫を開けて思わず目が点になりました。実家の土地建物の権利証とは別に、近県に60坪ほどの土地の権利証がでてきたのです。どうも祖父から相続した土地らしく、更地で何にも利用していない土地だということがわかりました。貸金庫からは、そのほかにも国債や株券等色々と出てきました。
あわてて実家に戻って貸金庫の中身を整理してみると、Sさんの父親が遺した財産はなんと1億円を超えるものだということが分かりました。幸いにも相続人はSさんひとり。突然の財産の発見だったので、質素倹約を徹底していた父親に感謝するとともに、遺産分割上の問題がないことに胸をなで下ろしました。
結局、相続税の支払いが必要なため納税については税理士に、その後の資産運用についてはFPに相談した結果、まず父親の残した金融資産でSさんのマンションのローンを完済することに。そして、実家の土地は売却せず、県外の更地だった土地とそれぞれにアパートを新築することにしました。
相続後、Sさんはアパートオーナーとしてハッピーな生活に一転したのは言うまでもありません。金融資産の利回りよりも圧倒的に高利回りの家賃収入に驚くばかりだということです。
Sさんのように、遺族が把握していない財産が見つかることは少なくありません。また、相続財産は、プラスの財産だけではなくローン等のマイナスの財産も対象となりますので、逆に遺族の方が困ってしまうケースも存在します。
相続税には無縁と思っていても納税資金が必要になるケースもあります。遺された家族の生活をしっかり守るためにも、事前のきちんとした準備や対策が大切です。
記載内容は、2008年5月現在施行中の税制・関係法令等によるものです。したがって、将来変更される場合がありますのでご注意ください。 個別の税金のお取り扱いの詳細につきましては、所轄の税務署等にお問い合わせください。また、財産の正確な評価・税額計算、および税金の申告等にあたっては、税理士等に必ずご相談・ご確認ください。
このコラムは、ハートフォード生命「セカンドライフの達人」様の取材に江里口がお答えしたものを再編集しました。