遺言の書き方-注意すべき点
遺言を作成する上で注意しなければならないことがあります。それは、何のために遺言を作成するのかということをしっかり意識することです。遺言を作成する最大の目的は『争族』防止にあります。なのに、遺言を作成したがために『争族』になってしまったということがあり、遺言を作成すべきではないと主張する人もいます。
では何故『争族』防止のために作成した遺言がもとで『争族』になってしまうのでしょうか。法律で定められている様式を充たしていないというのも原因の1つですが、それ以外にも遺言を書く上で知っておかなければいけない注意点を2点ほど挙げたいと思います。
第一に、相続分の指定方法についてです。遺言では法定相続分の規定にかかわらず共同相続人の相続分を定めることができます。法定相続分1/8を1/4の指定相続分に、あるいは1/6を1/2というように変更できるということです。しかし、これはあくまでも規定です。このように遺言で相続分を指定しても争い事の火種は残ります。
そもそもなぜ相続では争いが起こるのかを考えてみて下さい。ほとんどのケースでは『相続財産の分け方』について話合いがまとまらないからです。それを防ぐ目的が遺言の作成なのです。つまり、話合いをしなくていいように、財産の持ち主である遺言者が生前にどの財産を誰に相続させるかを決めておくことが肝心要なのです。
ですから、遺言を作成するときは1/2だとか1/3だとか割合を記載するのではなく、『自宅土地建物は太郎に、A銀行の預貯金は次郎に、Bアパートは三郎に』というようにどの財産を誰にと特定する必要があるのです。つまり、分割方法の指定です。
1/2とか1/3といった割合の指定だと、その割合になるように話し合わなければならなくなり、結局そこに争いの火種を作ることになるのです。
第二に、一部遺言の作成です。一部遺言とは全財産の一部だけを遺言で相続させる人を特定するものです。例えば、自宅土地建物以外にも預貯金や有価証券、或いは他の土地を所有しているのに、遺言で指定しているのは自宅土地建物だけで、他の財産について一切触れていない等の場合です。この場合もこの遺言自体の解釈や他の相続財産の分け方について話し合わなければならないので、ここにも争いの火種があります。
巷には簡単に遺言を作成できるような本がたくさん並んでいます、もちろんそれを参考にして頂いていいのですが、それだけでなく相続の専門家に相談することでより良い内容の遺言が作成できることと思います。
遺言の作成時には、気を付けて下さい。
☆執筆者:中島浩希(CFP、相続士)