セカンドライフ満喫法(2)都心のタワーマンションに暮らす
「都心のタワーマンションの住み心地とはいかがなものか」。憧れてはいても、実際にそこに住むことができるのか疑問に感じる人もいるようですが、その疑問を自ら体験することで解消したMさんのお話です。
映画ファンで演劇も楽しむうえにグルメで大のワイン好きという、多彩な趣味を持っているMさんの自宅は、30年前に購入した東京郊外の一戸建て。土地の面積は60坪ですが、建物は築30年以上経過していて老朽化が目立ちます。
購入当時は不便なことも多かったのですが、時の流れとともに都市化が進み、地下鉄が開通するだけでなく、ショッピングセンターなどが建ち並ぶとても住み心地のいい街になりました。
しかし、子育て世代の若い夫婦には魅力的な街であっても、Mさんはまったく魅力に感じなくなってしまいました。趣味を存分に楽しむには、どうしても電車に1時間以上乗って都心の映画館やデパートに出かける必要があったからです。
そうなると、もっと交通の便がいい場所に住み替えたくなるのは人情です。Mさんの奥さんも同様の趣味を持っていることから、都心へ住み替えたいという願いは夫婦2人の願望になりました。
そんなある日、都心のマンションの知人宅に遊びに行きました。そのマンションの窓から見える東京の夜景は、まさにMさんが思い描いていた夢の世界と同じでした。
Mさんは、迷うことなく自宅を都心のとあるタワーマンションに買い替えを決意しました。
Mさんの購入は素早いものでした。物件探しを始めて間もなく、完成物件として販売が始まったばかりのマンションを見学したMさんはその日のうちに購入を決めました。ほんとうは南向きの部屋が欲しかったのですが、限られた予算では、面積を取るか、北向きを取るか、あるいは低層階を取るかの選択を迫られました。
結果的に選んだ物件は、北東向きの60m2で27階でした。高層階を最優先した結果です。
自宅の売却益6,000万円をそっくり購入資金にあてて手に入れた2LDK60m2のマイホーム。これまでの一戸建てとは比較にならないほど狭い空間に変貌してしまいましたが、それでもMさんはすばらしい夜景が見えるマンションと、近くで映画や演劇といった趣味を堪能できる生活にとても満足しているようすです。
また、マンションの玄関前のバス停から街中どこへでもバスで移動でき、手軽に街の文化を楽しめるという新しい魅力を発見することもできました。Mさんのマンションのある地域には、小さなコミュニテイバスが走っています。
1回100円で乗れる便利なバスです。100円で街を散歩するという新しい楽しみは、毎日の日課ともなり、路地裏のちょっとした居酒屋や小さなインテリアショップ店を見るだけでも楽しいようです。
都心の生活の楽しみは、散歩と自転車の行動範囲の中で趣味の世界が味わえることです。映画ファンであるMさん夫婦は、60歳以上ということで一人1,000円の割引で映画が楽しめるのです。そして、映画の帰りには、お気に入りのワインを買って帰ります。
Mさんの事例のように、都心のタワーマンションといっても広い億ションばかりではありません。したがって、郊外の庭つき一戸建てからは想像しにくいような狭い居住スペースを受け入れることができるかどうかがポイントです。まさにセカンドライフを都心で満喫している興味深い事例です。
このコラムは、みずほ信託銀行「ライフデスク」様に江里口が執筆したコラムを再編集しました。